今回は、外傷性非荷重損傷についてお話をします。
外傷性非荷重損傷は、AStともいいます。
通常診察では、AStと言う方が多いと思います。
外傷性非荷重損傷は、通常の非荷重の整復では効果がでないという意味では、特殊な非荷重損傷とも言えます。
通常の非荷重損傷との大きな違いは、下肢の知覚神経が鈍麻する事です。
外傷由来の仙腸関節の損傷ですので、知覚神経に影響がでるからです。
知覚神経に影響がでるという意味では、Pltと同様です。
ルーレット知覚計で左右の下腿の検査を行って、外傷由来かどうかを確認します。
外傷性非荷重損傷が存在する場合は、損傷側の下腿の知覚神経が鈍麻しています。
外傷性非荷重損傷が発生するには、大きな原因があります。
前方へ転倒した際に、膝をつく事によっておこることがほとんどです。
なぜ、膝をつくと外傷性非荷重損傷が発生するのでしょうか?
膝にかかった衝撃が、大腿骨を経由して寛骨に到達します。
その衝撃によって、寛骨が仙骨に対して前方に回転する事によっておこるからです。
骨模型の股関節を90度屈曲させて、膝に衝撃を加えると、膝をついた転倒が股関節や仙腸関節に大きな衝撃がかかる事がよくわかります。
さらにこの事が、非荷重整復法では対応が難しい原因ともなります。
というのも、寛骨にかかる衝撃の入力方向・強度・回転角速度などの条件によって、整復時の整復意識方向が変わる為です。
これが、外傷性非荷重損傷の最大の特徴であり、難易度を大幅に上げている理由となります。
通常の非荷重整復の整復意識方向は、水平に対して後下方30度で行います。
一方、外傷性非荷重損傷では、30~60度までを想定する必要があります。
整復意識方向が少しでもずれると、整復の効果が期待できません。
外傷性非荷重損傷の整復の難しいところです。
外傷性非荷重損傷は、通常非荷重損傷の整復意識方向の違う整復法です。
通常非荷重整復法が基本となりますので、外傷性非荷重損傷を整復する為には、通常非荷重整復法を習得することが重要となります。